2025年03月07日(金)お知らせとうきょうすくわくプログラムに参加しています
とうきょうすくわくプログラム活動報告2024-25
1、活動のテーマ 園庭の自然で遊ぶ
【テーマ設定の理由】
当園では園庭の田んぼや小さな畑やプランターなどを使い、年長組が中心となって稲作や野菜の栽培を楽しんでいる。お世話から収穫、調理、収穫物を使った遊び、種取りと一年を通して様々な活動が園生活の中に取り入れられている。今まで年長児が育てたものを食べさせてもらったり、園庭の環境を通して植物や野菜、実が育つことを見たり触れたりして体感してきている。その経験が子どもたちの中にどう蓄積・消化され、今までの経験を土台に園庭の自然環境にどのような興味を持って関わるかを捉えたいと考えた。
2、活動スケジュール
4月 ①種・苗を植える
5月 ②田んぼの土混ぜ
9月 ③園庭の食べ物探検
10月 ④種の身長計作り
11月 ⑤脱穀精米~おにぎり作り
3、研究活動の実践
【活動のために準備した環境・素材・道具】
園庭の田んぼの修復をしたり、新たに植物の棚を作ったりした。
子どもたちと話し合って出た野菜や果物の種や苗を準備する。
保育室の一部屋を「けんきゅうじょ」にして、筆記用具を準備したり、白衣やビーカーを飾ったりして雰囲気を作った。また、「けんきゅう」用に1人ひとつ虫眼鏡を準備し、招待のチケットをつくった。

【子ども達の姿】
今まで積み重ねてきた体験を元に自然に関わり、熱中して「けんきゅう」したり、発見を楽しんだり、友だちと発見を伝え合ったりする姿を見ることが出来た。
種を見たときにはこれが人参のたね?と驚いたり、お弁当の中のいちごやトマト、ゴマや梅干し、インゲンにも種を見つけたり、今まで目が向かなかったことも気がつく姿があった。その後、家で食べた物の種を持ってくる子が沢山いて興味が広がっていった。アボカドの種をみて「これが種なの?」と大きさに驚いていて、いつも食卓で使っていた「たね」という言葉が、芽が出て育っていく「たね」とが繋がったのではと感じた。
自分の育てて収穫した物は苦手でもチャレンジしてみようという姿も見られ、保護者から、「家では絶対食べないんです!」と驚かれたこともあった。
植物が育つには土が必要なことは知っているようだったが、「種は食べちゃってるよね」「おなかには土がないから育たないんだよ」「でも種を食べるとおへそから生えてくるって言ってたよ!」「えーうんちででてくるんだよ」と素朴な感覚と、今までの経験からの考えを出し合っていた。田んぼの土混ぜの経験では、ドロドロの土に飲み込まれそうになる中「地獄だー」という子もいて、少しの怖さや緊張がワクワクにつながり、保護者の方の手伝いも多数あり、お祭りのような雰囲気にもなった。歓声をあげながら支えあい土を踏んだり、全身で泳ぐように動いたり、手足に泥を塗って感触を楽しんだり、壁や窓に塗りつけていたずらをしたりと全身で土のパワーを感じていた。
園庭の食べ物探しでは、視点を意図的に絞ってより詳しい発見を楽しめるように、虫眼鏡を準備した。「食べ物」というテーマを設けたが、子どもたちにとっては「虫の食べ物」「鳥の食べ物」とほぼ全ての園庭の植物が食べ物と捉えられていた。気になった実や葉を「けんきゅうじょ」に持ち込み、詳しく調べる姿はワクワクに溢れていた。気がついたことや分かったことを自由に絵や言葉で付箋に書いて大きな壁にはることにした。どんどんと埋まっていく壁を見ながら、見比べたり、友だちと同じ発見をした事を喜んだり、まだ誰も気がついていないと誇らしげだったりと興味を広げていく姿があった。匂いをかげば食べられるかどうかわかると自信を持って教えてくれる子もいて面白かった。香りや形、手触りなどでの発見をすることから、だんだんと中身はどうなっているのか、どっちが重いかな、タネはいくつあるのかなど興味の深まりが見られた。
田んぼも夏休みが明けると大きく成長し、変化があったことに子どもたちもすぐに気がついてくれた。稲刈りが近づいた頃、稲が何かに(ハクビシンではないかということになった)食べられているのを発見し、急いで稲刈りをした。土混ぜから田植え、かかしづくりを経て、おにぎりパーティーを楽しみにしていた子どもたちは使命感に燃えて稲刈りをしてくれた。その後、脱穀機・唐箕体験ののち、2−3人で一つのすり鉢、すりこぎを使って脱穀・精米をする。去年の年長児が作ってくれたおにぎりがとてもおいしかった記憶があるようだった。一粒一粒良く見ると骸が取れていくのが見えるので、その度に「出てきたよ!取れたよ!と見せにきてくれる。「これでおにぎり何個できるかな」と大変さを感じたり、「これも種なんだよね?」と不思議に感じている子もいた。
また園で育てたスイカを食べた時、可食部が少なかったこともあり「種がたくさんあってやだな」「種何個あるかな」「種があればエンドレスすいかじゃん!」という会話があった。種を集めて紙に並べて貼って数を数えることにした。その紙がとても長くなったので、高さ比べが始まり、それが「身長計」になった。(単位は〇〇スイカノタネ)廊下に貼っておくとみんなが身長を測るようになった。
「けんきゅう」の中でも定規や天秤を使って計測や比較をすることに興味をもつ子も多かったので、「種の身長計づくり」の活動を次のテーマにした。実や野菜を園庭から収穫することから始める。ナスやピーマンの種は本当にたくさんあり、何個あるか絶対最後まで数えると燃えていて、グループの友だちと分担してから後で繋ぎ合わせ、協力する姿があった。種を取り出すときも、「これはなんかダメそうだね」「タネは守られているんだね」という気づきもあったようだった。「身長計」というテーマだったが、種が少なく短くなったものは「手の長さを測るもの」や「ジャンプした移動距離を測るもの」になっていく。また、長くなった事を喜んで友だちと端と端を持ってみたり、床に伸ばしてその横に何人かで寝転がって長さを楽しんでみたりしている姿もあった。


4.振り返り
活動を通して一番感じたことは「けんきゅう」する、探求することが子どもたちにとっては日常的な遊びであり、生活であるということだった。当園では毎日自分の好きな遊びを充分に楽しめる環境があり、その中で日々「けんきゅう」をしているのだろうと思う。今回はテーマを設定し、グループの友だち、保育者と共有したことで、その探求活動を一緒にたのしむ機会を持つことができた。職員での振り返りでも、子どもたちがテーマを理解しながらも生き生きとけんきゅうをしている姿に感心したという意見があった。正解やゴールに向かって保育者が誘導するのではなく、同じテーマの中でそれぞれが次々と発見をし、それを表現して共有することで、それが一つの勢いになっていくことが感じられ、保育者自身も楽しかった。その環境が保証されてさえいれば、子どもたちは自分から力を発揮して生き生きと成長し学んでくれるのだと思う。
また、年長組になると長さや重さ、数にも興味を持ったり、道具を使ったり、自分の持っている経験や知識を組み合わせて、真実を突き止めたいという思いが出てくるのだとも感じた。
「けんきゅう」は自然と40−50分くらい続き、小学校の授業時間程度だとも思った。年長組のこの時期の活動だからこそ見えてきた姿だったと感じる。
どう活動をどう捉えていいか悩んだこともあったが、壁に出来上がった子どもたちの発見や表現の集まりを、他の職員が「園庭の図鑑」と表現してくれ、ありのままをそのまま受け取ることの大切さに改めて気がついた。


